フランスは、10年ほどで出生率を一気に2.01人まで増やすことができました。この数字は、先進国では突出しています。一般的には「バックス」という制度によって婚外子も平等に扱われることになったことが要因だといわれていますが、実はそれだけではないようです。
フランスは、バックス以外にも、両親の仕事を支える制度を整備しました。子どもが2人以上いれば家族手当が支給されたり高校までの学費が無料になるなど、親が子育てする上での費用負担を軽減しています。また、育児休暇によるキャリア損失を防ぐことを企業に義務付けるなど30以上の制度を整えています。
こうした努力が実を結んで大きな成果をあげているのです。フランスは不況の中ではありますが、過去35年で最も出生率が高くなったそうです。制度によって育児と仕事を両立することが容易になったことも大きく影響しているようです。
フランス以外でも北欧を中心に出生率向上に成功している国があります。デンマークもその一つで、12年間で1.82人まで向上しています。デンマークでは、18歳になると生活支援金か奨学金が支給されたり、出産や育児休暇中の給与が保証されるなどの制度を整えています。
間接的な制度としては、共働きを推進したり男女間の給与格差を是正するなど、男女の役割が平等になるようなものや、大学までの教育費無料化、学歴による収入差の是正。残業を無くし、家族で楽しむ時間を増やす。医療や老後に心配がいらない社会制度など、多くの対策を講じています。
前述のとおり、他国では見事に少子化対策を成功させている事例があります。では、日本も真似をすれば出生率向上になるのではないか、と考えるのは少し無理があるかもしれません。これだけの理想的な社会を実現するには相当のお金が必要だからです。現在、日本の消費税は8%ですが、デンマークでは22~25%、所得税は50%以上と日本とは比べ物にならない税率になっています。これはなかなかマネができるものではなさそうです。
日本でも消費税は徐々に上がっていますが、国に税金を収めてもその分がちゃんと返ってくるのか心配だと考える人が多いようです。このような政治不信が強まり自分で貯蓄して備えたほうがマシだと考えるようでは、北欧のような国になることはできないでしょう。また、アメリカのような格差社会を目指すのか、北欧のような共存共栄型の共生社会を目指すのかといった、国民性や方向性の違いもあるため日本独自の方法で少子化対策を考えていく必要があるでしょう。