高齢化社会では、地域とのつながりが希薄になる傾向が強くなっています。ここでは「自治会、町内会」「家族」「高齢者サロン」の3つの視点で高齢者と地域の関係を見てみましょう。
【自治会、町内会】
単身や若い世代の世帯が増え、自治会や町内会に加入する人は減少。特に男性は、社会人として働いていた頃は自治会活動をしていなかったため、退職後も地域との関わりを持てないというケースが目立ちます。
【家族】
三世代同居している世帯はぐっと減りました。子どもたちは遠方で暮らしていることも多いですよね。一人暮らしでは子どもや孫世代とのつながりがないため、地域の情報も得にくくなってしまうでしょう。
【高齢者サロン】
自治会や家族などこれまでのつながりが減っていく中、高齢者向けのサロンや趣味の集まりが地域との交流の役割を担うようになってきました。仲間が増えて外出のきっかけにもなるため、自治体では積極的な参加を呼びかけているようです。
高齢者と地域のつながりの強化が求められている中、厚生労働省が実現を目指しているのが「地域包括ケアシステム」です。地域包括ケアシステムとは、「住まい・医療・介護・予防・生活支援」の5つが地域で一体的に提供される体制のことです。まずは医師や介護事業者、自治会、ボランティアなど多職種が参加する「地域ケア会議」で地域のネットワークを構築し、課題を把握します。これにより、医療・介護や保険内外サービスを柔軟に組み合わせて切れ目のない支援が実現できるとされています。
地域包括ケアには地域に即したさまざまな取り組み方があることが特徴です。以下に2つの例を紹介します。
【東京都新宿区】
高齢者への生活支援の仕事を、低所得者や疾病や障害を抱える生活困窮者に依頼する「ケア付き就労」で互助機能を構築。「まちカフェふるさと」で居場所づくりにも取り組んでいます。
【千葉県浦安市】
市民の学びの場「うらやす市民大学」で、「介護予防リーダー養成講座」を開講。介護の担い手を養成しています。
高齢者と地域のつながりや地域包括ケアシステムには、まだまだ大きな課題が残っています。
ひとつめは、男性の地域参加です。先にも触れましたが、これまでサラリーマンとして働いていた男性は地域社会への参加がしづらい傾向にあります。これを受けて、男性向けの高齢者サロンや、パチンコ・麻雀などのレクリエーションを取り入れた介護事業所などもあるようです。
ふたつめは、在宅医療の遅れです。高齢者が地域で暮らしていくには、病院ではなく在宅で見守りを行う体制が必要です。在宅医療には、24時間体制の在宅療養支援診療所や訪問看護ステーションなどの施設の充実が不可欠。しかし実際には、在宅医療の体制が整っていない地域も多く見られます。自宅での見守りが難しいため、介護施設に入居してしまうというケースも少なくありません。
高齢者と地域の関係は、その土地によって大きく変わります。状況を改善していくためには、地域の現状を把握し、その場所で何ができるかを考えることから始めるのが大切なのではないでしょうか?