高齢化社会が進むにつれて介護業界への需要は高まります。現状すでに介護業界は人材不足を課題として抱えていますが、今後ますます介護を必要とする人が増える一方で介護をする人の数が追いつかなくなっていくおそれがあります。人材不足になれば、介護職として働く人の負担はさらに重くなるという悪循環を招いてしまいます。
このような介護業界の人材不足を解決する策のひとつが海外からの外国人労働者の受け入れです。すでに諸外国と「経済連携協定(EPA)」を結ぶことで、看護師や介護福祉士候補となる外国人の受け入れが進んでいます。具体的な例としては、2008年のインドネシア、2009年フィリピン、そして2014年ベトナムと協定を結んでいます。
EPAを結ぶことにより、外国人がその職につくことが認められていない職業分野でも、締結国から来日する候補者に関しては労働力として受け入れることが可能になります。受け入れ国にとっては人材不足の解消というメリットがあり、外国人にとっては労働のチャンス拡大につながります。介護分野で言うと、候補者として来日した外国人は、受け入れ施設で働きながら介護福祉士の資格取得を目指して勉強に励みます。資格取得の最長期限は4年間と定められているため、4年以内に資格を取得できなかった場合は帰国しなければならないという決まりになっています。
しかし、外国人が日本で介護の仕事をする上で最大の壁となるのは言語の違いや文化のギャップを乗り越えることにあります。その上、傍らで資格取得の勉強をしなければならず、4年間という期間内に資格取得を実現することは容易ではありません。結果、候補者が労働力として定着しづらいという新たな課題に直面します。
EPAによって来日する候補者は、自分たちの国では介護の資格を持っているか、一定の研修を受けてきており、介護に関する知識やスキルはすでに習得している人たちです。その上で、日本の介護施設で働くために、実際に日本の施設で経験を積みながら日本語も習得してもらうことにより、日本の介護業界で活躍してもらうための仕組みですが、前述の状況から、もともとあった「外国人技能実習制度」を拡充することにより、特別な学歴や資格を持っていなくても、介護職の経験があれば受け入れられるようにするという新たな方策が講じられました。
外国人技能実習制度は国際協力の一環です。制度で定められている分野において、開発途上国からの外国人を受け入れ、来日した人は日本で働いて技術を身につけ、その技術を自国に持ち帰ることにより経済開発に貢献するという仕組みです。この制度に新たな分野として介護の技能を追加することで、日本の介護業界は外国人労働者受け入れの間口を広げるかたちとなりました。
さらに、外国人が日本の介護分野で長く働き続けるための策として、入管法の改正案も閣議決定されました。留学生として来日した外国人が介護福祉士などの国家資格をとることによって、在留期間を更新することが可能となり、違法行為さえなければ日本で働き続けられることになります。
海外からの労働力を受け入れる動きは今後ますます拡大していくだろうと考えられます。