総人口に占める65歳以上の割合を表す「高齢化率」の数字を見てみると、日本が23.3%(総務省「人口推計」(平成23年10月1日現在)であるのに対し、中国は9.1%(中国国家統計局(2011年末現在)と一見少ないように見受けられます。しかし、そもそも分母である人口に大きな違いがあるため、2011年現在の高齢者人口で比較してみると、日本が2,975万人であるのに対して、中国は1億2288万人と日本の4倍以上に達しているのです。
また国連の調査によると、中国は今後急速に高齢化が進み、2035年には30%を超え、30年間で20%以上上昇すると考えられているそうです。以前から専門家の中で中国の高齢化が進んでおり、人口規模から高齢者市場は莫大なものになると考えられていました。実際に、高齢者数の数値が公開されていくにつれてその大きさと可能性が徐々にビジネスチャンスではないかと、経営者も食いついている状況です。
中国の1人当たりの購買力平価換算GDPは日本の約4分の1と言われていますが、前述のとおり高齢者人口は日本の約4倍であり、単純に計算すると潜在マーケットの大きさが期待できます。しかし、日本の高齢者と中国の高齢者とでは経済状況も違うでしょうし、年金受給額も違いますので、単純にはいかないかもしれません。ですが、まだまだ顕在化していない部分も多く、中国の高齢者市場は今後の成長が期待されており、他国にとっても有望市場であると考えられます。
一方で、経済成長の観点からみると、中国の経済発展のスピードが高齢化のスピードに追いついていないという見方もあります。日本が高齢化率9.1%だった時代は、1980年前後であり、当時の1人当たりGDPは既にUSD 9,309を超えていました。なお、現在の中国はUSD 5,414ほどであり、中国という国全体の経済状況を加味すると市場としては物足りないという専門家もいます。
高齢化のスピードが経済発展のスピードよりも早いことは、様々な問題を抱えていると考えることができます。具体的には、現役世代の減少による労働力不足や賃金高騰、労働型産業の弱体化などが考えられます。また、労働力の質が先進国より劣る場合は、知識型や技術型の産業を振興することは難しいと言われています。日本企業が中国に参入する場合には、こうした問題もリスクとして考慮する必要があります。
また、中国特有の商慣行やカントリーリスク、地域間の経済格差などを十分考慮し、適切な参入と撤退時期を見極める能力が必要になるでしょう。