バブルが崩壊してからの日本経済は概ね横ばい傾向で、かつてアメリカと世界トップを争っていたような勢いはありません。これからも若干の成長はありつつも、製造分野などでの隆盛はもう無いものと思ってよいでしょう。
そんな日本のなかで急成長し、かつこれからの成長を見込まれているのが介護市場です。介護市場の大半を占める介護給付の額から見てみましょう。2000年度には3.6兆だったものが、2014年度にはほぼ3倍の10.0兆円となっています。日本国内の総体的な経済成長率が年1%にも満たないことが多い昨今では、この数字が驚異的であることがわかるでしょう。また、見込みとしては2025年度には21兆円になると推計されていて、これからの成長も約束されている業界といえます。
日本は先進国として真っ先に高齢化社会の問題に直面しましたが、それはピンチでもあり、チャンスでもあったといえます。というのは、介護問題に向き合わなければならないことによって、介護市場が熟成し、社会全体で経験を積んだということでもあるからです。この高齢化は、いま働き盛りの年齢層が多い国にもいずれ訪れる問題です。そういった国が豊かになり、医療がほとんどの人に行きわたるようになれば平均寿命も延び、自ずと現在の日本のような高齢化社会を迎えるからです。
また、割合率でいえばまだ高齢者は少ない中国ですが、高齢者の人口自体は、日本の総人口に匹敵するほどになっています。現在は社会保障がそれほど整っていないために、そういった方々に対するビジネスはまだ萌芽状態にはありますが、生活に必要なものが満たされた次には、健康や美容といった分野が伸び、最終的には介護の分野へと波及していきます。
こういった国々に対して、多くの経験によって培われた高度なサービスをもって進出できる力があるということです。そういった面でも、日本の介護業界の伸びしろは大きいといえます。
介護に関連するビジネスとしては、介護給付金に直接関る身体介護や身の回りの家事のケア、予防といったもののほかにも、シニア向けのサービスとして幅広いものがあります。
たとえば、介護の現場で使われるものの製造だけをみても、施設の建築から日々使われる消耗品まで、あらゆるものが含まれます。形のないものであれば、生涯教育などのような、生きがいを創りだしていく、教育・情報といったようなサービスもそうです。ほぼすべての業界が、いままでは健康な人たちをターゲットとしていたものを高齢者向けにシフトすることで、関りをもつことのできる分野でもあるわけです。